金光のつぶやき

スポットライト 光と陰

2017/11/02

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スポットライト 光と陰


台風18号九州上陸の一報を受け、益々強くなる風雨の中、車を走らせる。1組の偉大なダンサーがスポットライトの中から外へと足を踏み出そうとしている。9月17日。ギャラクシーマスターズ選手権。武道館。気持ちはよく分かるとは言うまい。ただその勇姿をこの目に焼き付けたいと思う。


お昼を少し回ったところで会場にたどり着く。ここ数年ギャラクシーに来ているが、こんなにお客様が入っているとは少々驚きである。グランドフロアはほぼ満席、一階席は半分弱、二階席にもそこそこの観客がおり、今日の出来事を既に予感させる様な熱を帯びている。


午前中に行われたプロフェッショナルライジングスター戦ではボールルーム部門で貫名組、ラテン部門では野村組が優勝を飾った。聞く所によると貫名組はターンプロしてから初めてのタイトルという事。改めて賛辞を贈りたい。


今年のギャラクシーマスターズ選手権はアジア太平洋選手権ボールルーム部門と併催されており、アジア太平洋の13の国と地域の代表25組(日本人8組を含む)がエントリーされ、ギャラクシーマスターズと並行して競技が進められていく。もしギャラクシーもアジア太平洋選手権も両方決勝まで進んだ場合、準決勝と決勝を2回ずつ踊ることになる。それだけでも20曲、なかなかタフな試合である。


プロラテン部門の予選が始まる。一予選からシードの選手が踊っている。エントリー人数が少ないのでラテン部門はシード選手も一予選から踊るとの事。同じテーブルにヘーゼルフレッチャーと織田理子先生がいたので少し話を聞いてみた。


金光「日本のコンペを観ていて、日本人が世界で活躍する為に必要なものはなんだと思いますか。」

ヘーゼル「うーん、日本人だけでなく、世界的に言えることだけど、正しいフットワークが踏めていない選手が多いわよね。そのフットワークがボールなのか、ボールフラットなのか正しく理解出来ていないから正しいフットワークからのエネルギーが出てこない。結果上半身での運動に頼ってしまっているわよね。トップ選手のビジュアルを真似していても正確なフットワークが出来ていないから成長していかない。」

理子「全体的に1人で立てていない子が多いよね。バランスが分かっていないというか。」

金光「女子って、リードとフォローの中でオフバランスになったりするとこが魅力的に見えたりするけど、その辺はどう?」

理子「もちろんオフバランスはあるけど、オンバランスで立っている事が前提で、そこからのエクストラの部分だからね。」

金光「なるほどね。確かに最初からオフにはならないよね。」

ヘーゼル「私が思うに、ここ何年か日本人は相対的に女性より男性がよくみえるわね。ビューティフルポーズではなく、ビューティフル HOW TO が見たいわ。」

ヘーゼル「日本の選手は男性のコーチャーばかり習ってるの?女性のコーチャーは男性のコーチャーほど教えてないの?」

金光、理子「そんなこともないけど、、」


プロボールルーム部門の二次予選、ひときわ大きな歓声が上がるその先には、目にも鮮やかなグリーンのドレスを身に纏った庄司組の姿が。踊り手のその表情を見れば、そのダンサーがどうゆう決意で、どんな気持ちで、どんなコンディションでフロアに立っているのか伝わって来る。いい踊りである。感謝なのか、踊れる喜びなのか、ある種達観している様にも見えるその姿は一時代を担ったチャンピオンとしての威風に満ち溢れている。

その庄司組の選手宣誓からアジア太平洋選手権も並行してスタートする。世界チャンピオンのアルナス組も参戦しており、白熱した戦いが繰り広げられる。隣のテーブルの篠田忠先生に少し聞いてみる。


金光「今アルナスが踊っていますが、アルナスが他の選手と一番違うところはどんなところですか?」篠田「やっぱりポジションの取り方、フレームの作り方が全然違うよね、ほら今プロムナードに開いたけど、カチューシャのポジションが男子よりかなり後ろになったでしょう。ポジションによって2人の立ち位置が瞬時に切り替わっていくんだよね。」

金光「なるほど、、彼らは踊っていてもすごく静かに見えますが、」

篠田「フットプレッシャーの違いかな。床を使って動作を起こすからトップは静か。ジャッジをしていてもアルナスやビクターが近くでカービングフェザーなんかすると、踏み込んだ時に床がグンと沈むんだよ。」

金光「床がグンですか!? 逆に日本人と韓国、中国人と違いはなんですか?」

篠田「ボディトーンからくる上下の厚みの違いはあるよね。日本人のトップ選手や韓国、中国人の選手は横のトーンだけでなく縦のトーンも見える。ほら庄司君もスッとしてるでしょ。」


ギャラクシーマスターズプロボールルーム部門、準決勝にはJCFから8組、JBDFから3組、シンガポール カナダ オーストラリア チャイナ ロシアの合計16組が進出。

ラテンアメリカン部門はJCF5組、JDC4組、JBDF7組にアメリカからコッキ組の参戦で計17組での準決勝である。多過ぎないかな。重なり合っている選手の中から短時間で決勝メンバーをピックアップするのは至難の技だろうなと、ジャッジを終えた織田慶治先生に聞いたところ。


織田「ジャッジをするようになってわかったんだけど、選手を見れるのは本当に一瞬。大勢踊っている中でやはり浮き立って見えるダンサーには、隙がないんだよね。立ち方だったり、トーンであったり、フットワーク、アームワーク、二人のコネクション、全てが隙なく繋がっていてそれがダンスになっていく。多くの日本の選手に必要な事だね。あと当たり前の事だけど、プロフェッショナルとしてフロアに立つ以上、メイク、髪型、表情、体型、隙のな様にして欲しいよね。特に予選。。ひどい選手が多すぎる」

金光「確かにね、、こうやって外から見てるとよく分かるよね。」

織田「あとは、よくジャッジのことを踊りながら気にしてみえるカップルがいるけど、ジャッジを見なくていいから観客に向かって踊って欲しいよね。」

金光「いるね!ジャッジに向かってハッ!とかニューヨーク開いちゃう子とか。」

織田「困るよね、、」

金光「織田っち存在感あるから目がいっちゃうんじゃない?」

織田「笑っ、、」



アマチュアラテン部門には22組がエントリー。うち8組が決勝進出である。人数が少ないせいか、なんとなく覇気が無いようにみえる。体幹が弱いのか、連続して踊り始めるとボディが抜けてウィークに見えてしまう。広い会場、広いフロアに立つと、どうしても大きく動こうとしてしまう。結果、軸がぶれてしまいポスチャーが崩れてしまう。武道館のような会場では逆にスモールセンターでタイミングをクリアに踊っていったほうが良く見えたりする。そういった意味では優勝の押川組が一番良くまとまっていたように感じた。

アマチュアボールルーム部門は139組がエントリー。近年アマチュアのオープン戦で100組を超えるエントリーは久しく無かったように記憶している。何はともあれ喜ばしい事である。


ギャラクシーでは武道館のフロアの周りを円卓で囲んだ席配置になっており、その周りをさらに椅子席で囲んでいる。段差があるので比較的どの席からでも見え易い配置になっており、他にも会場内にも出店業者のブースが出ていたり、記念撮影用のフォトブースが設置されていたりと、色々な工夫を凝らしているように見受けられた。会場内をチェックしながら歩いていると、ちょうどアップ中のリカルドコッキ選手に出くわした。インタビューしても構わないかと聞いたところ快く承諾してくれる。


金光「やあ、リカルド。今年はよく日本に来てるね。」

リカルド「やあ、そうなんだよ。沢山呼んでもらって感謝しているよ。」

金光「毎週、試合やデモで世界を飛び回ってると思うんだけど、どうやってコンディションを保っているんだい?」

リカルド「そうだね、結構ハードな時もあるけど僕もユリアも踊る事が好きだし、求められてる事は幸せな事だから頑張れるよ。」

金光「フィジカル的にもキツイし、メンタル的にもキツイ時もあると思うんだけど、どうやってモチベーションを保っているの?」

リカルド「踊っている時はいつもユリアと会話をしてるんだ。今日はこういくよ、とか、おっ!そう来たみたいな。毎回違うし、それがケミカルリアクション(化学反応)になったり、スパークしたり、そういう2人の会話を楽しみながら踊っているから平気なんだ。」

金光「1年間をほぼ休み無しで、そのクオリティを維持して踊り続けている事に純粋に敬意を表するよ。」

リカルド「ありがとう!でも今日は試合の後にデモンストレーションがあるからさすがに疲れるよ。世界で最もタフなイベントのうちの一つだね。」

40歳を過ぎてもなお、世界のトップでいるという偉業は、計り知れない努力に裏付けされたものである。そしてそれを楽しみながらこなしているのだから敵わない訳だ。


ギャラクシーマスターズプロボールルーム部門決勝。中嶋組 三浦組 庄司組 シャオ組 樋口組のJCF5組に チャイナ ロシア シンガポールの3組を足した計8組。日本人はJCFの選手しか残って無い。後ろの方でお客様同士が、JCFの試合だから他団体はチャンスないわよと囁いている。誤解を恐れず言わせて貰えば、この結果には少々驚きである。準決勝の時点で違和感が無かったと言えば嘘になるが、UKのライジングで結果を出している選手や、過去の実績では上位にいる選手の姿は見えない。もちろんコンペだからその時の踊りが全てだと言えばそうなのだが、この様な結果が続けば他団体の選手はチャレンジする意欲をなくす事は想像に難しく無い。

思い出して欲しい、つい5年ほど前までは他団体の試合に出るのはタブーだった事を。日本のダンス界全体が縮小に向かう中で、このままではダメだと、みんなで力を合わせてダンス界を盛り上げていこうと。何年も粘り強く交渉を重ねた結果、アジアオープン、日本インター、ギャラクシーマスターズの3つの武道館での試合に、いまだかつて無いほどの選手が他団体から出場する様になった。ジャッジの人数構成やオーガニゼーションに対してとやかく言うつもりは無い。選手は試合を選ぶ権利がある。また同じダンス界で生きていくならば、その業界を支え、盛り上げる為に、試合をサポートしていく義務も負っている。しかしながら選手がその試合に価値を感じ無ければ、または観ている観客に、その政治の舞台裏まで見透かされてしまうようでは、その試合の未来はどうだろう。せっかく盛り上がって来ている機運を削ぐような事にならなければいいのだが、、

そう言った意味ではプロラテン部門の方では、世界チャンピオンのコッキ組に加え、JCFから中川組、歩浜組、JDCから鈴木組、辻組、JBDFから中島組、須藤組、 森田組、竹内組の9組決勝となり、順当な決勝メンバーのように見受けられた。

コンペはエネルギーのぶつけ合いである。フロアの中で一番エネルギーを出しているカップルが勝利を手にするのだが、そのエネルギーにもクオリティが伴っていないと評価には結びつかない。ジャッジは何ラウンドも踊っていく中でその見極めをする。上手いだけでは勝てない、でも暴れ回っていても奇跡は生まれない。そんな事を考えながら隣の大竹達郎先生に話しかける。

金光「決勝観ていてどうですか?」

大竹「うーん、正直良さは感じない。残った子はまだセンスがある方。」

金光「何が不足しているんでしょうか?」

大竹「筋力、素材、ファンダメンタルなもの。非常にトレーニング不足に感じる。センスとはなんなのか、センスとは磨くもの。緻密な計算と緻密なトレーニングが必要だと思う。」

金光「例えばジムに行ってトレーニングをしたりとかそういう事もやはり必要でしょうか?」

大竹「俺はジムはあんまり必要ないと思ってるよ。ダンスに必要な筋肉は踊ってつける。踊り込んでつけていくもんじゃない。今自分がどこを使っているかという意識が大切。」

金光「なるほど、でも元々筋力が圧倒的に足りていない子もいますよね。」

大竹「そうだね、日本人は2人で組んだ時のパワーが出ない。」

金光「1人の時の方が良くみえるカップルもいますね。」

大竹「相手を感じようとし過ぎるせいで、女子が弱く見えてしまうよね、女子のトレーニングに対する意識の問題かもね。」

大竹先生と話をしていて、昔、カルメンのレッスンを受けた時に、ブライアンはナチュラルダンサーかという話になった事を思い出した。ナチュラルに見えているものは、ナチュラルに見える為の努力の積み重ねの結果、ナチュラルに見えている。彼は決してナチュラルダンサーではないわ。センスは磨かれるもの。ナチュラルにさらりとやってのける事の凄さに気付かされた思いがした。


途中、カラーが取れてしまい、蝶ネクタイ無しで踊るというハプニングに見舞われたものの、ドレスを白に着替え颯爽と踊る姿を、スポットライトと沢山の声援が追いかける。観に来る価値のある一世一代の踊りである。全てのラウンドを踊り終えて、観客に向かってお辞儀をするその表情は晴々としたものだ。

庄司組、ギャラクシーマスターズ優勝。アジア太平洋選手権でもビゾーカス組に次いでの準優勝である。ロシアの強豪を抑えての快挙に会場が沸き立つ。そして引退の発表。最後のオナーダンス。スポットライトに照らされて、武道館中の視線を浴びながら、一歩一歩噛み締めながら踊っていく。その一挙一動に彼らが積み上げてきた歴史が宿る。


そしてスポットライトの外へ、、


現役でいられる時間はあっという間。引退してからの方がずっと長い。ダンサーとしてダンスの追求は止む事は無いならば、これからは競技という縛りを超えて、より純粋にダンスの本質を追求していけるのではないか。

私もまだダンス追求の入り口に立ったばかり。好きな事を勉強していけると思えば、なんとまあ楽しみが沢山の人生である。

庄司先生、名美先生、本当にお疲れ様でした。


文責

金光進陪





金光進陪